【ミカワタナベ】もうドラムを叩けないと思った時と転機

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ミカワタナベ・インタビュー#02

現在はドラマーとして様々なアーティストのサポートをしているミカワタナベさん。
過去にはuno x kenken groove contestに入賞しkenken(RIZE.LIFE IS GROOVE)と共演。
また、宇多田ヒカル15周年企画に名曲”traveling”をバンドカバーした動画を送り、宇多田ヒカル本人とディレクターから評価される。

そんなミカワタナベさんの原点や転機、これからの思いに迫る。

前回記事:【ミカワタナベ】音楽の道に進む。自分で自分の人生の舵をとる。

もうドラムを叩けない!

ーー自分にとっての転機を教えてください。

4年前…くらいでしょうか。音楽をやっていて人間関係の大きなトラブルに巻き込まれてて。自分の過ちで不必要に人を傷つけたり、自分も、好きでやっている音楽で心が抉られるような思いをして、完全に人間不信になってしまったんです。誰のことも信じられないのは本当に辛かったです。バンドもサポートもすべて叩く場所を失ったと思いました。ストレスで持病のアトピーは悪化し、ものすごい太りました。

そんな無気力になる中、妹がGARNET CROWのライブに連れて行ってくれました。
といっても、完全に無気力だったから楽しみとかそういう感情は全然なくて。
妹が心配して、気を遣ってくれたんですね。「あの時のお姉ちゃんは本当にヤバかったよ」って未だに言われます(苦笑)
それはGARNET CROWの解散公演だったのですが、予想以上にすごく良かったんです。
私は名探偵コナンの主題歌くらいしか知らないレベルだったのですが、知らない曲にもたくさん引き込まれました。

それを観てふつふつと…GARNET CROWが好きな人とだったら音楽できるかな、という気持ちが湧いてきました。
本当に久しぶりに前向きになったから、ライブから帰ってきてすぐに当時流行っていたmixiのコミュニティでGARNET CROWの曲をみんなでセッションをやりませんか?という“GARNET CROWセッション”という企画トピックを立てました。そうしたら30人くらいの反応があって。企画なんて今までやった事なかったけどこれはもう、やれってことだと思って。場所探しからルール決めから参加希望者のまとめから、全部一人でやりました。いざ開催したら結局は50人くらいきてくれたんですよ。

心が死ぬ前は、バンドのサポートをしつつ都内、関東でやってるジャムセッションは片端から足を運ぶ、というような生活をしていました。その時に例えば…あるパートの人が頑張って練習してきているにも関わらず周りの人があまりきちんと準備していなくて、人との生演奏なのにその人が孤立してる、あまり楽しめてないなっていう状況をけっこうたくさん見てました。
だから自分が主催をするなら誰にもそういう思いをさせたくないって思いました。
ネットでのやり取りでお互い顔が見えなかったから、こちらに不信感を持ってもらいたくなくて、参加者全員と取れる限りコミュニケーションをとりました。

結果として初めて企画運営したGARNET CROWセッションはものすごく盛り上がり、参加者はとても楽しんでくれました。
参加してくれた人は偶然にも楽器初心者だったり、歌もカラオケでしか歌わないっていう人が多かったのですが、そういう人たちが人と演奏する経験をして、ものすごく楽しかった、気持ちよかったと言ってくれて。
こういう音楽のやり方もあるのかって、ハッとしました。

ハッとしたのはそれだけではなくて。「普段音楽活動なんて全然していないから、スマホ越しに参加ボタンを押すのもすごく緊張したんですよ」って言われて。
音楽やっていない人にとってはスタジオに行く、ステージで演奏するのは人生の一大イベントなんだなと。人と音を合わせることは自分にとっては日常のことでも音楽やっていない人からしたら非日常だったんです。

誰かのためっていう言葉は今までも考えていなかった訳ではないけれど、そのイベントを自分ですべて企画し、それでダイレクトに反応を貰えたことによって”誰かのために”というのが現実味を帯びました。
音楽を聴くだけだった人が、“生演奏が楽しい”っていう体験から、好きなアーティストのライブに行ったりCD買ったりするようになって。自分で曲を作るようになった人もいました。これって結構すごいことなんじゃないか?て思ったんです。
こういう人が増えたら、いろいろ嘆かれている音楽業界の現状みたいなものは変わるのではないかとさえうっすら思います。

GARNET CROWセッションは最初に企画してから既に4年経ちますが、今も年に1~2回のペースで継続中で、毎回40~50人くらいは参加していただけているイベントになっています。
このGARNET CROWセッションの応用で、最近は特定のアーティスト縛りのないセッションも企画するようになりました。
「生演奏」だけでなく「録音」の醍醐味も知ってほしくて、開催場所をレコーディングスタジオにしてレコーディングセッションをしたりもしています。

私はプロを志していますが、自分の企画するイベントはプロとアマの隔たりなく開催しています。「おまえは何をやっているんだ?」「そんな金にならない、意味ないことやって」と言う方も少なからずいました。きっと言わないだけで思っている人もたくさんいるんじゃないかな…でも、そう言われたとしても私にとっては大切なイベントです。お金のことを全く考えていないわけでもないですし。

立ち直ったきっかけとしてはその他にはuno x kenken groove contestや宇多田ヒカル15周年企画で入賞したことも大きかったです。

これは周囲にわかる結果として残ったし、ここからできた人の縁があり、また別のプロの方と共演する機会も増えました。
憧れで始めた音楽で、好きなアーティストから直接的なリアクションをいただけることほどうれしいことはないですよね。
音楽に正解なんてないけど、自分が表現したものが認めてもらえるということだから。

演奏だけではない大切なこと

それから、企画に参加してくれる人が私のことを
“きちんと連絡をしてくれる人”という評価をしてくれたことは大きかったです。
「いろんなセッションに行くようになったけど、あなたは運営も演奏も参加者への気遣いが全然違う。だから安心して参加ができる」って。そんなに特別なことはしていなくて、最低限のコミュニケーションをとっているだけなんですが、そういう風に見られているんだなと。

心が死ぬ前までは、自分にも他人にも“演奏がかっこよければ他のことはどうでもいいんだ”って思っていた部分が少なからずあったと思います。
もちろん演奏のかっこよさは必要です。これは大前提です。
しかし礼儀や礼節、当たり前のことは当たり前にやらないとだめだなと思うようになりました。

今思うと、自分は遅刻をしょっちゅうしていたし、“報・連・相”もきちんとできていなかったんですよね。お金に困った時には身内に借りたこともありました。お金そのものは稼げば後で返せるけど信用を失ったらすごく大変です。失った信用を取り戻すのはとても難しいです。

大きな人間関係のトラブルから時間も経って、また音楽をやれるようになりました。これは本当に今関わっている人のおかげです。

それまでと決定的に変わったのは、気持ち、情熱だけで動かなくなったこと。自分もですし、相手に対しても。それと「相手はどうされたら嬉しいか?」ということを一度は必ず考えて行動するようになったこと。それが必ず当たるわけではないですが、考えるだけで違いますね。

「本気です!気持ちだけは負けません!なんでもやります!」
「本気でやってるから、気持ちで助けて!」って自分が言った、言われたとします。
でも実際に「これできる?頼むね」と言われた時に、「できません」ってなってしまうと当然相手は「え?気持ちは?」ってなりますよね。相手がそうだったら私もそう思います。

気持ちは誰にも負けないと言っていても、実際にできなければそれは結果として気持ちでも負けていることになるんですよね。気持ちを持っているだけで、行動に繋げていないわけなので。

今はドラムを叩くことでお金を稼ぎたいという気持ちはもちろんありますが、それよりもドラマー…極論は“音楽に携わるミカワタナベ”っていう存在に信用を得たいという気持ちの方が大きいです。
それがないまま仮にお金を貰ってドラムを叩いたりしても、本質から逸れていると思います。

*明日に続く

ミカワタナベ ライブスケジュール
☆TOM(サポート)
9/23(土)下北沢barrack block cafe
前売り2500円/当日3000円
※出演21:55予定

☆GOOD RICH
9/24(日)横浜B.B.STREET
10/27(金)横浜CLUB SENSATION
※詳細未定

☆藤田尚之(サポート)
9/27(木)渋谷La.Mama
MINATO PRESENTS『懐かしい未来、新しい過去』
藤田尚之 with 3P Girls / SUPPIN KIPPU / +1ARTIST!
OPEN/START 18:30/19:00 ADV ¥4,000+D

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バンサポ編集部
バンド・音楽活動に役立つコンテンツを配信! ストリーミング時代の音楽活動、現役アーティストのインタビュー等。

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