サブミッションメディアとは?lute presents Workshop for Musicians #01
ポスト・デジタル時代のミュージシャンのためのワークショップ 形式イベント「Workshop for Musicians #01」イベントレポート
2018年6月20日(水)、lute主催のミュージシャンのためのワークショップが行われた。
luteは日本初のサブミッションメディア・lute musicを運営している。
今回はまだ日本ではまだあまり馴染みのない『サブミッションメディア』をはじめとした新しいメディアの存在、デジタル時代の音楽活動の在り方、ヒットの定義について、再考していくイベントが行われた。
鼎談
◆登壇者
五十嵐 弘彦(lute株式会社 代表取締役)
野田威一郎(チューンコアジャパン株式会社 代表取締役社長)
ジェイ・コウガミ(All Digital Music 編集長)
サブミッションメディアとは
サブミッションメディアとは楽曲プロモーションに活用できる、あたらしいメディアです。
アーティスト自身が直接、メディアに自分の楽曲を提案(サブミット)でき、その楽曲とメディアの相性が合えば、楽曲がピックアップされます。
また、サブミッションメディアはYouTube を中心に様々なプラットフォームで人気のアカウントを運用しているため、ひとつのメディアに取り上げられることによって、一気に多くのリスナーまで楽曲が届く可能性があります。
今までのメディアとの違い
既存のメディアは文字情報が多かったが、音楽を聴きながら新しい情報を得ることができる、ということが大きな特徴です。
海外のサブミッションメディア事例
日本国内だとまだ浸透していないのですが、海外だとマンモス級のサブミッションメディアが誕生しています。
・Trap Nation
・Majestic Casual
・TheSoundYouNeed
etc…
海外のサブミッションメディアは静止画に楽曲をフル尺で載せて聴かせています。
僕もサブミッションメディアを立ち上げるにあたって、調べれば調べる程、面白いなぁと感じています。Majesticとかは普段から自然に聴いていました。
ジェイさんはどうですか?
新曲を探す時に今何が流行っているのかを探すツールで、サブミッションメディアのプレイリストをチェックしている音楽ファンや音楽ジャーナリストは増えてきていると思います。
音楽シーンのこれまで、これから
音楽の聴き方、音楽との出会い方が変わっていると思いますが、ジェイさんから見ると世界はどう変わっていますか?
グローバルではストリーミングサービスが1番の音楽プラットフォームであることは間違いないです。
ストリーミングに音楽ファン、音楽ビジネスが集約されていて、音楽業界は急ピッチでビジネスを移行しているのがグローバルの現状。
例えばストリーミングサービスの場合は楽曲の権利、出版の権利はどうなるのかを変化させる必要があり、また既存メディアやプラットフォームを使ってどうやって新人をブレイクさせるのかなど、従来のアプローチからストリーミング市場のリスナーやアーティストに対して細かく最適化させていっています。
チューンコアさんから見るとどうですか?
日本に関してはカオスになっていて、ストリーミングの人もいればCDを買う人もいる。
聴き方がバラバラになっていてアーティストさんはどうすればいいの?という状態かと思う。
今は過渡期なのでデータがなく模索している段階ですよね。
ですが、日本もストリーミングが主流になっていくと考えています。
ストリーミングによって音楽への接触は増えてきていることは間違いないですね。
音楽ビジネスの在り方
音源物から少し話を広げてお話したいと思います。
もちろん音源物も大切ですが、ライブでの興行売上や、特に海外ではアーティスト自身のブランドを持っていたりするケースが増えています。
こうした音楽業界のビジネスとして捉えた時のトレンドについてどう思いますか?
それがトレンドという見方もあるが、一つの選択肢だと思っています。
ブランドやアーティストビジネスが音楽を取り込んで行く流れは確かに強まっている。
アーティストのブランドとレーベルや企業が組むということも増えているが、みんながやるべきということではなく、成功例がたくさんあるうちの一つだと思っています。
一つのロードマップがあるわけではない、ということですよね。
野田さんはどう見ていますか?
ストリーミングによって音楽の価値は再定義されていて、
これからのアーティストがこの時代での売り方やブランディングに向き合うには、自分がどこに軸をおくのかが、
アーティストのキャラ次第になっていく。
音源だけでいくのかブランディングまでやっていくのか、
そこを突き詰めていく必要があると考えています。
変化するレーベルとミュージシャンの関係
そんな中で海外ではミュージシャンはどういう動きをしているのでしょうか?
海外はメジャーが3社しかないので(Universal Music、Sony Music、Warner Music)その他はインディーズという括りになるので日本のレーベルとアーティストの関係とは少し状況が異なるのですが、インディーズで収益が上げられている勢いがあるレーベルがある反面、全然食えていないレーベルが存在するのも事実です。
また、その一方でメジャーが元気を取り戻しつつあり、
メジャーとディストリビューション契約として組んでいるアーティストも増えてきていて、メジャーはマネタイズの方法に賢くなってきています。
そういう意味でアーティストは選択肢が増えてきています。
マネタイズをしたいのか、長いスパンで活動したいのか、どこに重きを置くのかという選択肢が増えていますね。
僕がメジャーとインディーズの件でいつも言っているのは役割の問題だと思っていて、やりたい世界を実現するためのチームの一貫でしかない。
そのパワーバランスが崩れていった時に言われたことをやっていてつまらない、という感覚になってしまう。
海外では主導がアーティストになっていることが多いような印象があります。
うまいチーム作りになれれば良いのではないかと思っています。
みんなで新しい形を作っていく中でチューンコアはそのツールとしての存在を目指しています。
ミュージシャンが見るべきデータと解析
ストリーミングサービスがメジャーになったことで、ミュージシャンは自分の音楽がどれくらい聴かれているかなどのデータを取りに行きやすくなったと思いますが、実際にはどうでしょうか?
ここ数年、SpotifyやApple Musicはアーティスト向けのデータを提供し始めていて、
TuneCore Japanも速報レポートとしてデータを配信しています。
速報レポートは利用者の60%くらい見てくれているので、皆さん関心があるというのは実感しています。
ヒットの定義とは?
今はヒットの定義が曖昧になってきていますが、ジェイさんはどう見ていますか?
ヒットとファン数は必ずしも比例しない。
音楽業界がビジネスを伸ばす、アーティストがキャリアを積んでいく、そこの部分を考えるには売り上げをどうやって作っていくか、売り上げを伸ばせるか、ということがヒットの定義に結びつくと考えています。
例えばChildish Gambino / This Is AmericaもあれだけYouTubeの動画でプロモーションをやっていながら、iTunesでめちゃくちゃ売れている。マネタイズのポイントをいくつも作って、売上を作ることが現実的には可能になってきているので、これからの音楽シーンではどれだけ売上に直結させられるか、が必要だと感じます。
野田さんはどうですか?
どんなミュージシャンでもどんなアーティストでも売上は目指さないといけないと思っている。
それはヒットの定義ではあるが、別の問題として今はチャートが曖昧になっている。
つまり、先ほど言ったようにリスナーがどこで聴いているのかわからない状態なので、チャートは今後改善されてくるのではないか、と考えています。
ちなみにluteさんのヒットの定義をどういう風に考えてサービス運営をされていますか?
lute musicでは、再生回数もヒットを定義づける要素の一つだと考えていて、そこから人に伝播し、例えばMVを見るきっかけになったり、音源や別の物の売上に繋がったりと・・・音楽ビジネスが360度で盛り上がる、そんな世界が当たり前になっていくことを目指しています。
“ゼロからわかる「サブミッション」指南”
イベントの後半では実際にサブミッションメディアをどうやって活用していけば良いのかを具体例と共に解説いただいた。
◆登壇者
渡邊貴志(チューンコアジャパン株式会社)
サブミッションメディアの役割
サブミッションメディアの役割は、主に「編集」です。実は、こうしたチャンネルにアップロードされている音楽、写真、イラストなどは、基本的にメディア側がつくったものではなく、彼らが権利を有しているものでもないんですよね。
彼らがやっていることは、クリエイターから提案(サブミッション)されたアセットを、自分たちのセンスで組み合わせて、世の中に発信しているんです。
サブミッションメディアのポイント
クリエイターとメディアが、お互いの「クリエイティヴ」を交換し合うことによって、成り立っています。ミュージシャンは自身のクリエイティヴである「音楽」をメディアに提供して、メディアは彼らの「編集センス」や「メディアプラットフォーム」を提供している。
こうした「クリエイティヴの相互関係」によって、クリエイターとメディアがフラットな関係で結びついているのも特徴ですよね。
サブミッションメディアのお金の流れ
YouTube で発生した広告収益は、基本的にはすべて、メディアが得ています。メディアプラットフォームをアーティストへ提供する代わりの、「場所代」といったイメージでしょうか。ただ、彼らが運用している Spotify 等のプレイリストで、アーティストがサブミッションした楽曲が採用された場合、その部分の再生収益は、もちろんアーティストが得ることができます。
※ケースによって様々ではあるが、YouTube の広告収益単価よりも、音楽ストリーミングサービスの再生単価のほうが、はるかに高い。たとえ YouTube の広告収益を破棄しても、アーティストにとって十分に良い条件なのでは? という見方もできる。
※ lute music では、YouTube Content ID に登録された楽曲に関しては、YouTubeで発生した広告収益もすべて還元している。
lute musicへサブミッションサブミッションメディアの注意点
前述のように、サブミッションメディアは、YouTube チャンネルを広告収益化しているケースが多いため、YouTube Content ID に登録した楽曲をサブミットしてしまうと、トラブルに繋がってしまうことが多い(メディアの広告収益を奪ってしまう・ブロックしてしまう)ので、気をつけること。
(lute music では、Content ID 登録楽曲のサブミットであっても、大歓迎です)
サブミッションメディアの見つけ方
まずは YouTube でひとつ、興味のあるチャンネルや動画を発見しましょう。
気になる楽曲の関連動画に出てくるチャンネルを見ると、同ジャンルのサブミッションメディアである可能性が高いそうです。
サブミッションメディアへのサブミットの仕方
YouTube の概要欄をしっかり読んで、適切な方法を選ぶ。
概要にサブミットの方法が記載されていることが多いとのこと。
・フォーム
・メールで送信
上記の2通りのことが多い。
メールの文言サンプルなどを確認したい場合、「music submission」「music submission template」などの英語キーワードで検索すると、使いまわしのきくテンプレートが見つかりやすい。
サブミットの注意点
ダウンロードリンクで楽曲を送るのは控える。特に WAV 音源で送っている人は要注意。音源を受け取る側の気持ちと負荷を考えて、「リンクを開ければすぐに聴ける」「気に入ったらダウンロードもできる」という2点を抑えましょう。SoundCloud のプライベートリンクで共有するのが、オススメとのことです。
良い音源なのに相手が聴く前の段階で手間になってしまうとチャンスを失う事になりますからね。。。
サブミッションメディアに取り上げられるポイント
前提として「魔法」ではないので、いきなりビッグメディアに取り上げられることは難しいです。継続的に取り組むことが大切になります。
その上でメディアと自分の楽曲が合っているかを考えましょう!
メディアがアップしている直近の5曲程度は、きちんとチェックしましょう。
また、BCCで色んなメディアに大量に送りつける、なんて相手に失礼なことはしないようにすることが大切です。
基本的なことを踏まえた上で
最も自信のある「1曲」を、サブミッションしましょう。
なお、同じ楽曲のチャンスは一回まで(あまりに何回も送るとブラックリストに入ってしまう可能性もあるそう)なので、自信のある楽曲でサブミットしましょう。
サブミッションの段階から、楽曲の説明文とアートワークを充実させましょう。
特に説明文は、アートワークよりもよく見られる情報なので、漏れのないようにしましょう。
リリース後、30日以内の楽曲に留めましょう。ベストはリリースタイミングの新曲。
30日を過ぎると旧譜扱いになってしまい、メディア側のプライオリティーが落ちます。
メディアとの相性を確認した上で、とにかく打席に立つ。多くのサブミッションにトライしましょう。
まずはluteさんにサブミットしてみよう!
lute musicへサブミッション
最後に
まだ日本ではあまり馴染みのないサブミッションメディアですが、今後の音楽ビジネスを考えていく上で日本でもどんどん増えていくのではないか?と感じました。
調べてみてもあまり情報がありませんので(特に日本語がない。。。)、こんなに詳しく情報をくださった今回のイベントに大変感謝です!
lute
Instagram:@lutemedia
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福田 理沙
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